JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

笑う魚 その11

これまでのお話

『笑う魚』 その1 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その2 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その3 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その4 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その5 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その6 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その7 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その8 - JuniperBerry’s diary 

笑う魚 その9 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その10 - JuniperBerry’s diary

 

「この魚は オリノコ川上流の、ある部族が守り神として祭っているという、

伝説の魚に違いありません!」

 モレーラス博士は 手に持った紙挟みから 一枚の紙片を取り出し

記述の中にある 魚の描写部分を早口で読み上げた。

 

博士の言葉を聞き終わり、その場の三人は顔を見合わせた。

「だけど、その神魚ですけど 単なる迷信じゃないんですか?」

「誠にその通り、高名なモレーラス博士ともあろう方が

そんな民間信仰を取り上げるなど。

科学的根拠はどこにいったんです」

 

 モレーラス博士は コホンと咳払いした。

「いいですか、この言い伝えは別格なのです。

過去何回か、部族の祭を見た者が記述を残しておるのです。

しかし、当の神魚は部族に大切に守られて

祭の時以外は村の中でさえ姿を見ることができず、

もちろん部外者で 祭の時以外に見た者はいない。

多くの学者が探検隊を編成して 探しまわっていたにも関わらず です。

そのうちその部族もどこかへ消えてしまった。

それで魚類辞典には名前が載っていないのですな。

しかし、見つからなかったというだけで 存在していたのは確かな事実。

この魚は色も形態も 言い伝えの魚にぴったり当てはまる。

ほぼ間違いないでしょう」

 

「で、この神魚は何の神様なんだい?」

 アレハンドロの質問に モレーラス博士は 

また 紙挟みの中をごそごそと探した。

「『笑う魚神』という名前からしますと

なかなか陽気な神様らしいですね。

しかし まだまだ確認しなくてはならない事が 山積みです。

私の知り合いに 民族伝承に明るい男がいましてね

彼の所に行けば もっと詳しい事がわかるに 違いありません。

ここから少しの距離ですから、車と運転手をお借りしますよ。

今日中に戻ります」

 言いたい事だけ言って 博士はパジャマの裾を翻し

駆け足で去って行った。

 

その12に続く