JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

笑う魚 その4

これまでのお話

『笑う魚』 その1 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その2 - JuniperBerry’s diary

笑う魚 その3 - JuniperBerry’s diary

 

「は? 今なんと言いました」

「誰が笑うって?」

そこにいた男たち 正確には 魚マニア仲間の 

アレハンドロ・ナンブッコとエンリケ・ガローチョ

サンパウロからやってきた 魚類学者の

マイアーノ・モレーラス博士に

ダ・シルバ氏の 四人が 一斉に漁師を見た。

 

「笑う魚など ありえませんぞ。 

魚に 精巧な表情筋など ないのです」

モレーラス博士は フォークの先に一粒ずつ突き刺した 

四個の甘く煮た豆のうちの 一個だけを器用に 

おちょぼ口の中に入れた。

 

しかし他の二人は フォークとナイフを置いて 

既に立ち上がりかけている。

ピノ、見てやりましょうよ。

笑っているように見える魚なんて 縁起がいいじゃないですか」

 ダ・シルバ氏をピノ呼ばわりしたのは 

アレハンドロ・ナンブッコである。

 

ダ・シルバ氏はアレハンドロと漁師を 

交互に見ながら言った。

「夕方とは言っても 外はまだまだ日差しが強いではないですか

わざわざ暑い中へ行く必要など」

 アレハンドロは執事のペドロに目配せをした。

「日差しが気になるんだったら 

ペドロに日傘を持ってこさせましょう。」

 

ダ・シルバは ただただ動くのがおっくうなのだ。

私を見習って もう少し痩せたらどうなんだ

藁シベのように細い体を ひょろりとゆすって 

立ち上がったのは エンリケ・ガローチョ。

彼には 何かというと あてこすりを言う 悪い癖があった。

 

「動くのが大義なのではありません。

もう今日は十分に見たから 気が乗らないだけです。

あなたたちが是非にと言うのなら 仕方がないですね

ペドロ! ぐずぐずせずに手を貸しなさい」

ダ・シルバ氏は 立ちあがろうとして果たせず

執事のペドロを叱りつけた。

 

その5につづく