JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

笑う魚 その2

 

 ダ・シルバ氏が一日の中で 

最も好み 大切にしているのが

豪勢な晩餐を囲みながら 近郊に住む魚マニア達と語り合う

夜七時から朝方ベッドに入るまでの 10時間である。

 

晩餐は 飼育棟と化した離れの中央に位置し

細君が魚臭いと言って近寄ろうとしない 

パティオでとるのが通常であった。

そこで 男たちは食事に舌鼓を打ち 

サトウキビから作ったピンガ酒を片手に 

魚談義に花を咲かせる。

 

四方を お気に入りの魚たちが泳ぐ水槽に囲まれた

広くて長細く 豪奢な作りのダイニングテーブルの上には

エビ団子、白身魚を煮込んだムッケカ(魚介スープ)

ヒルのオレンジソースがけ

シュハスコ(炭火で焼いたブロック肉)

デスフィアーダ(肉を使ったサラダ)

フェイジョアーダ・コンプレッタ(煮込み料理)

ヤシの新芽のサラダ

パッションフルーツのマラクジャや

アレンティージョ(スポンジケーキのシロップがけ)などなど

ダ・シルバ氏の好物が 所狭しと並べられる。

 

食事を楽しんでいる間 水槽からは

装置の出す ポコポコという音に混じって 

魚達が体をくねらせて出すゴボリという音

物憂げなジジジという音

古代の呪文を思わせる音が聞こえ

音に合わせるように 色とりどりの魚たちが 

ゆうらゆうらと

時には 電光石火のごとく泳ぎ回る

 

大好きな魚に囲まれ 

時間をかけて 思う存分美食を堪能する

パティオにいる時間こそ

ダ・シルバ氏にとっての至福の時であった。

 

 その3につづく