JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

汕頭刺繍

柄じゃないけど

刺繍とかレースとか 

繊細で綺麗なものが好き

(かといって、服は基本ジーンズだし

ラインは基本ストレート フワフワ系は苦手なのだが)

 

いつからだろう、と過去を探って

ある記憶に辿り着いた

 

まだ私が 小学校の低学年だった頃

実家で行われた法事に

父の姉弟妹の6家族が 集まった

 

本家となる我が家以外は 皆

県外に住んでいる

全員揃って顔を合わせる機会は 珍しい

 

法事も無事に終わり

新幹線の駅まで 家族揃って

見送りに行った

 

今と違って はにかみ屋だった私は

父の後ろに隠れて

下を向いていた

 

新幹線がそろそろ 

ホームに入ってくるという時

父の姉が 私の名前を呼んだ

 

ふっくらとした丸顔に

いつも髪を綺麗にセットして

上品で洗練された立ち居振る舞いと

穏やかな話し方の

ミスN女子大にもなった伯母は

小学生の頃から そして大人になってからも 

ずっと私の憧れ

 

「Juniperちゃん、これで見送ってちょうだいな」

 

手渡されたのは 

繊細な刺繍が 全面に細かく施された

薄くグレーがかった

小ぶりのハンカチ

汕頭刺繍というのだとは 後で父から聞いて知った

 

叔父たちが

「さすが姉さん やることが違う」と

囃し立て

叔母達は私に向かって

「こうやって振るのよ」 と

手振りして見せてくれた

 

父の後ろに隠れたまま 

新幹線の車窓から手を振る 親戚に向け

小さくハンカチを振った

 

繊細で綺麗な 

汕頭刺繍のハンカチは

思い出と共憧れの伯母に似ているような気がして

あの日の思い出と共に

私の宝物になった

 

この時からだと思う

繊細な刺繍の施された

布が好きになったのは

 

その後 

伯母の家族は 

伯母が 一眼見るなり気に入って

住みたいと願った

西宮の高台に建つ 洋館を手に入れた

 

年齢を重ねても 銀髪を綺麗にまとめ

上品でおしゃれだった伯母は 

神戸の震災で亡くなった

 

今も時折

汕頭刺繍のハンカチを 取り出しては

細かな刺繍を指でなぞる

 

あの日の 新幹線ホームで

私に向かって手を振っていた 

伯母の姿が

重なって

見えるような気がする