小中と同じ学校だった
S君は ピアノがとっても上手な
男の子
大人しくて ちょっと
のほほーんとした 顔つきをしてたけど
一旦 ピアノの前に座ったら
顔つきが一気に大人びて
美しい音色が流れ出す
(私には S君の指に
魔法がかかってるように見えた)
昼休みになると
女子たちが 音楽室の
ピアノの周りに集まって
S君の演奏に
うっとり聞き惚れるのが お決まり
S君の家は
裕福という訳ではなかったけれど
いじめっ子だった 男の子たちも
S君には 一目置いていて
いじめたり 囃し立てたりすることは
なかった
その後
S君は 当然の如く
音大に進んだ
ずっと小さい頃から
ピアノという一芸に 邁進して
しっかりと目標を 持っていた
S君は
穏やかだけど 芯が きっぱりと
通っていて
自分をはじめとする
多くの子供達とは違ってた
小さな事には流されず
意志を ずっと保ち続ける
強さと落ち着きをもっていて
「子供の姿をした
大人みたいだな」って
子供の頃の私でさえ
ぼんやりと 感じていた
(先生より大人だったかも)
絵を志す子たちも そうだったけど
若い頃から
自分の向かう方向を
自ら知っていて
決めているっていうのは
心をこんなにも
大人にするんだなって思った
それが 子供らしくある
期間を 短くして
しまうのかも しれないし
その子にとって
最善最良なのかどうかは
わからないけど
私には
S君が
とってもとっても眩しく見えた。