小学校への通学路の
途中にある ケーキ屋さんは
年に一回 サンキューフェアと
銘打って
その期間は
シュークリームやエクレアを
一個39円で買うことができました
ある土曜日 母から
学校の帰りに シュークリームを
10個買ってきて と
頼まれた
そのお店に 行ってみれば
案の定 行列ができていて
(といっても昨今の
前の道を曲がって その先まで続くとか
くねくねと折り返しするような
行列ではありませんが)
お財布を握りしめ
順番を まちながら
前の人を 見ていると
みなさん 10個入りの箱を
2つも3つも 買っている
この人たちは
シュークリームを
そして その頃の私の
大好物だった エクレアを
思う存分 好きなだけ
食べるんだなあ
その様子を思い浮かべた
私の頭の中は
お菓子の家に たどり着いた
シュークリームとエクレアを
左右の手に持って
目の前には
エクレア山盛りのお皿
美味しい映像が 頭から離れない
もちろん 今になって 考えれば
何箱も手にしていた人たちは
親戚やご近所さんの分まで
買っていたのか
(生菓子の日持ちは当日だけど それでも)
翌日の分も 買っていたか
だったのでしょうね
とうとう 私の番が来て
お財布の中には
母から渡された390円と
貰ったばかりの お小遣い
いくつですか と聞かれ
思わず
シュークリーム10個と
エクレア10個ください と
言っていた
大きな箱を二つぶら下げて
長い通学路を 帰る
道のりは
ウキウキワクワク
妄想が止まらない
家に帰り
自分の部屋にすぐに 入って
二つの箱をどうしよう と考えた
母に言えば 思う存分
好きなだけ食べるという夢は
叶わない
夢を叶える方法は一つだけ
箱の中をエクレア5個
+
シュークリーム5個に
入れ替えて
一箱は 引き出しの中
もう一箱を
母のいる台所に 持って行った
早く食べたい
早く食べたい
待ちきれない
お昼ご飯を食べ終わり
母が「おやつよ」と
お皿にとってくれたのは
シュークリーム1個とエクレア1個
あー 美味しい
カスタードクリームって
何でこんなに美味しいんだろう
その上 引き出しの中の箱を
思うだけで
迂闊にも笑顔が だだもれで
「学校で楽しいことでもあった?」 と
聞かれる始末
いつもなら
大切に大切に食べるけど
まだまだ 10個もある
だから 今回は
ぺろりと 一気に平らげた
そして 夕食前に
部屋でこっそり
シュークリーム1個 と
エクレアを3個 頬張った
おいしーい
でも ちょっと罪悪感
夕食の時間になったけど
お腹が カスタードクリームで
いっぱい
ここまでで なんと
6つも食べている
これ以上 お腹に何も入れたくない
だけど
叱られたくないから
無理して詰め込み
シュークリームとエクレアの
待っている部屋に戻った
食べなきゃ 悪くなっちゃう
食べないなら 冷蔵庫に入れなくちゃ
だけど 入れたら
母にばれてしまう
どうしよう
こういう時こそ
食いしん坊の姉には
食いしん坊の弟あり
テレビを見ていた 弟を
無理やり部屋に連れて来て
黙っていなさいよ と口止めをして
箱の中を見せた
「好きなだけ食べていいよ」
流石 わが弟
あれだけ夕食を食べた後
にもかかわらず
シュークリーム2個を
平らげた
もっともっとと 言ったけど
流石にもう無理 と逃げられた
残りはどうする と
頭を捻り
ここはもう仕方ない
冷蔵庫の もう一つの箱の中に
こっそり 入れた
もし 母に問い詰められたら
正直に話そうと 心に決めた
「たくさん食べたかったから
お小遣いで もう一箱買ったの」って
だけど
母から 何を聞かれることもなく
話す機会を逸してしまった
たくさんのシュークリームとエクレア
楽しかったのは 食べるまで
お菓子の食べ過ぎで
夕食は美味しく食べられなかったし
いつばれるかと どきどきしていて
こっそり食べていても
気が気じゃなかった
やっぱり 美味しいものは
適量を食べるのがいいね と
小学生の時に 悟った(はずの)私
なのに 中学生の頃 念願だった
ボールいっぱいのプリンを作って
弟と二人でも 食べきれず
夕食もやっぱりちゃんと食べられずに
呆れられた
はてさて 学習能力はどこに?
美味しいものは
みんなで一緒に
適量が一番ですね
そろそろちゃんと
学習しなきゃ