隣の県に用事があって
せっかくだからと
故郷の街にまで足を延ばした
3年振りの町は なんだか
錆色をうっすらと上にかけたような
色合いになっていた
久々に泊まった
ホテルの窓から 見渡した町は
様変わりして
面影は残っているようでいて
見知らぬ街のような
ホテルから見下ろす
駅からのびる道は
小学校から高校まで
ずっと通ってきた
通学路
多分 向こうに見えるのが
小中学校
そして
大きなビルに隠れて見えないけど
向こうに高校がある
平べったい町だとばかり
思っていたけれど
手が届きそうなほど
すぐそこに
くっきりと緑色した 山が見えた
同じ市内なのに
実家の窓から見る景色とは
全く違う
こんなだったっけ?
いやいや 忘れていただけだ
そういえば
授業中 高校の窓から
ぼんやりと 四季折々の
色鮮やかな山を 見ていたのだったよ
目に映っている
色褪せたような町を通して
私の記憶は 色鮮やかな
昔に後戻りする
黄色い傘をさして
長靴を履いて 友達と笑いながら
バスを待っていた小学生の頃
中学生や高校生の頃は
雪が積もって自転車に乗れなくなる
冬の間 だけだったけれど
駅をつっきる地下道を
友達と笑いながら
時には 下を向きながら
歩いたっけ
目の前にある故郷の風景よりも
記憶の中の風景や 人々の方が
ずっとずっと 色鮮やかに
生き生きとしているのはなぜかしら
この町を離れて もう何年にもなる
ここはもう 私の街ではなくなってしまって
ちょっと他人っぽく
なってしまっているのかもしれない
いや よそ者になったのは 私の方
あと10年もしたら
もう 赤の他人みたいに
なってしまうのかもしれないね
私は
あと 何回この町に 来るだろう
この風景を この場所から見るのは
もしかしたら
もう両手で数えられるくらいしか
残っていないかもしれない
この日の記念に
ホテルの窓から
写真を撮った