JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

朝焼けの見える家と夕焼けの見える家

寝るのが大好きで

布団の中でうとうとするのが至福の時間

朝寝坊して良いとなれば、いっくらだって夜更かしできる

 

だから早朝の空を見たことは ほとんどなかった

実家の2階にある寝室の窓は西向き

大学時代も西向きで

東京で働いていた頃は真南だった

 

子供の頃から 窓を通して見る空は西が多く

夕焼けは見ても 朝焼けを見た記憶がない

 

そして、窓から見る空は

木や建造物に遮られて 小さい

 

それがドイツに行った途端

どの窓も急にこれまでにないサイズに大きくなった

 

ドイツでは一回引っ越ししている

 

はじめに住んだのは 夫の前任者から引き継いだ

7階建ての最上階

 

備品が古くて、冷蔵庫には霜がつくし 

ドイツの家には標準装備と聞いていた 食洗機もなかった

大家さんの好みを反映した 備え付け家具は

アンティークのバタフライテーブルだったり

飾り棚だったりしたのだが 傷だとか変色だとか

これまでの住人の歴史が深く刻まれて

シミだらけの くすんだ色のカーペットと相まって

部屋全体が 一昔前の映画のように 色褪せていた

 

ただ、部屋は南西角部屋で、西側の窓はどれも大きく

どの部屋からもベランダに出ることができる

 

周囲の建物が低かったのと

ドイツという国自体が平坦なこともあり

森とライン河と その向こうまで見渡せた

 

午前中は暗いけれど、昼過ぎから明るくなる部屋

この部屋が魅力を発揮するのは 夕方以降

 

空が薄紫色を帯び始め

ねぐらに帰る鳥たちが 目の高さを飛んでいく

教会の尖塔が 鋭角な影を作る

 

燃えるような 朱色の光が

西側全面に開かれた窓から差し込んで

部屋全体を黄金色に輝かせる

 

そこからはあっという間

刻々と変わる空と風景が混じり合い

濃い紫色に沈んでいく

 

夕焼け時のこの部屋は

まるで魔法にかけられた御伽の国のようだった 

 

 

この部屋に住んで2年ほどたった頃

大家さんから(お年を召していたので)

部屋を売りに出す と告げられた

 

夕焼け時の景色が 見られなくなるのは残念だったけれど

駄々をこねるわけにもいかない

 

急に いついつ行くからと不動産屋から連絡がきて 

当日在宅していなければならないのも厄介だったし

内見の人たちにクローゼットを覗かれたりするのもたまらない

 

新しく決めた住まいは 郊外のそのまた郊外

最寄は無人駅という、日本人の一人もいない町(村?)

ど田舎だった事もあり せっかくだからと

東南の角に建つ一軒家を借りた

 

この家の窓は南と東に開いていた 

東側は道を挟んだ向かいの家に遮られて 空はあまり見えない

南側には庭の向こうに 4階建てのマンションが建っているのと

屋根の軒が張り出しているせいで やはり空は小さい

 

残念

 

ある日の朝早く ベランダに出た

ちょうど道路の上の

ぽかんとあいた空間が薄紫に明るい

太陽がちょうどそのあたりから顔を出し始めていた

この家からは 小さかったけれど朝焼けが見えた 

 

日がのぼる時間帯の空は 

生まれたての一日にぴったりな 

柔らかいパステルの色だ

 

その日以来、晴れた日には早起きをして

ベランダから空を眺めるようになった

ただし、夏のみ 冬は凍えるので無理

 

平坦なドイツで夢中になった

朝の空と夕方の空

 

これから住む家のことを考えるとき

駅近か とか 最寄りのコンビニとか

それも大切だけど

それよりも 

朝日の入る家がいいか 

それとも夕焼けを眺める家がいいか

そちらの方が決め手になってしまいそう

 

本当ならどちらも欲しい

だけど そうなると 日本では

山のてっぺんに住むしか方法がない

ないものねだり ですね

 

それに、そんなところに住んだら

買い出しが大変だよ と

もう一人の私からツッコミが入る

 

朝陽? 夕陽?

さて、どちらがいい?