ずっと前の事なのですが
趣味で 文章を書いていたことがあります
文章の量からいくと
短編から中編の間位の
どっちつかずの 長さ
ある時
そろそろ 長いのも書いてみたら と
言われたことがあって
なら ちょっとやってみようかな
と 書き出したら
ハマった
その世界に
ずっぷりと 入り込んでしまい
寝る時と 食事をしている時と
仕事に行く時 以外は
ずっと 頭から離れない
登場人物が 思い思いに動き出して
ストーリーが勝手な方向に
進んで行ったりするから
まるで 初めて見る世界が
目の前に 映像になって流れていくよう
ある日
夢中になって 頭の中の映像を
紙の上に書き出していて
ふと気づいたら
出社時間 ギリギリになっていた
なのに ずっとこのまま
創作の世界に 浸っていたい…
もうちょっと もう少しだけいいよね
その時
だめだ! 逃げろ 立ちあがれ! と
頭の中で 叫ぶ声がした
このまま ここから
抜け出せなくなる
戻って来れなくなるぞ!
びくっとして
自分に 鞭打つような気持ちで
立ち上がって 身支度
会社に向かって 歩いている最中も
あの 癖になる様な 世界の余韻に
頭の中では ひたっているのに
それと同時に
あのまま いたら
蟻地獄に飲み込まれて 廃人になるところを
寸でのところで 逃れることができた
(あっぶなかったーーーと)
心臓がドキドキしている
そんな 状態
ローレライの歌を聞いた
船乗りたちや
ハーピーの声を聞いた
冒険者達も
こんな心持ちだったん じゃ ないかと思う
自分を見失っていくのを
もう一人の自分が 見ているような
気持ちの悪さ
今でも思い出すと
背筋がゾワっと来る
それ以来
怖くて怖くて
長い文章を 書けなくなってしまった
この世にも
ちょっとした ところに
異世界へ通じる穴は 開いているんだな
って
思った次第