
桜の季節
以前の記事を さらっていて
見つけたこの記事
そうそう こんなの書いてました
「てにをは」を ちょっと変えて
再掲します
***
子供の頃は
お花見に出かけた記憶が
ほとんどない
ただ
春になると 父が
玄関先でお茶をしようと言い出して
家族で 前庭に向かって座り
お茶やお菓子をいただいた
我が家のお花見は お手軽で
子供達の目には
お菓子しか入っていなかった
実家に 昔からある桜の花は
2本
1本は東の築山に植った
慎ましやかな 山桜
花が咲いてやっと
「あれ、こんな所に桜が」と
住人に気づかれる
ちょっと不憫な桜の木
そしてもう1本は
門から入ってすぐ左
高さは2.5m程なのに
枝の張りは 直径5m以上と
大きく広がる
傘を広げたなような形状の 桜
枝が地面につきそうなほどなので
木の下に座ってお花見はできない
桜の樹皮の質感のせいかも
しれないけれど
子供の頃から
お年寄りの木だなと思っていた
父は「桜切る馬鹿 梅切らぬ馬鹿」と言うのだ と
この桜をとても大切にしていた
玄関の上がりかまちに
家族で並んで座って見たのは この桜だ
実は 実家にはこの2本の他、もう1本桜の木がある
私が大学に入学した年
母が桜の若木をもらって
庭に植えた
すくすく元気に成長して
花を咲かせたが
こちらは古株の桜と違い
縦に縦に伸びた
ノッポの桜
あまり樹形の かっこよくない
この桜を
母は「Juniperの桜」と呼んでいた
実はこの桜 私は
咲いた様子を
ほとんど見たことがない
というのも 桜の季節の4月といえば
年度始まりで何かと気忙しく
家にゆっくり帰った記憶がなくて
母から来る 電話にも手紙にも
決まって
庭の花実の状況報告がある
そして桜の季節には 決まって
ヒョロっとした Juniperの桜の
話題になる
なのに、古木の桜の話は
こちらから聞かないと
教えてくれない
自分が成長を見守った
見栄えの悪い桜の方が
花も見事で樹形の綺麗な
嫁ぎ先に 古くからある桜の木より
思い入れが強かったらしい
名前を 母の桜とした方が
いいのではないかと思うくらい
ひょろっとした
桜の木に花が咲くと
声を弾ませ 嬉しそうな母
それから何年もの時が過ぎ
父は亡くなり
母は今 施設に入っている
実家も弟に代替わりして
古木の桜も
ひょろりとした桜の木も 切られてしまい
今残っているのは 築山に人知れず咲く
山桜だけになってしまった