JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

実家の桜

今週のお題「お花見」

 

子供の頃 お花見に出かけた記憶が ほとんどない

ただ

春になると 父が 玄関先でお茶をしようと言い出して 

家族で前庭に向かって座り お茶やお菓子をいただいた

我が家のお花見は お手軽だった

そして子供達は お菓子しか目に入っていなかった

 

実家に 昔からある桜の花は2本

1本は東の築山に植った ひょろっとした山桜

花が咲いてやっと 「あれ、こんな所に桜が」と住人に気づかれる

ちょっと不憫な桜の木

 

そしてもう1本は 門から入ってすぐ左 

高さは2.5m程なのに 枝の張りは直径5m以上と大きく広がる

傘を広げたなような形状の桜

枝が地面につきそうなほどで 木の下に座ってお花見はできない

 

桜の樹皮の質感のせいかもしれないけれど

子供の頃から お年寄りの木だなと思っていた

 

父は「桜切る馬鹿 梅切らぬ馬鹿」と言うのだ と

この桜をとても大切にしていた

玄関の上がりかまちに

家族で並んで座って見たのは この桜だ

 

実は 実家にはこの2本の他、もう1本桜の木がある

私が大学に入学した年 

母が桜の若木をもらって 庭に植えた 

すくすく元気に成長して 花を咲かせたが

こちらは古株の桜と違い 

縦に縦に伸びたノッポの桜

 

あまり樹形のかっこよくないこの桜を

母は「Juniperの桜」と呼んでいた

 

実はこの桜 私は咲いた様子をほとんど見たことがない

というのも 桜の季節の4月といえば 

年度始まりで何かと気忙しく

家にゆっくり帰った記憶がない

 

母から 来る電話にも手紙にも

決まって 庭の花実の状況報告がある

そして桜の季節には 決まって 

ヒョロっとした方の 桜の花の話になる

 

ただ、古木の方の桜の話は

こちらから聞かないと教えてくれない

 

自分が成長を見守った 見栄えの悪い桜の方が

花も見事で樹形の綺麗な桜の木より

思い入れが強かったらしい

 

名前を 母の桜とした方が いいのじゃないかと思うくらい

ひょろっとした桜の木に花が咲くと 嬉しそうだった

 

それから何年もの時が過ぎ

父は亡くなり 

母は今 施設に入っている

 

実家も弟に代替わりして 

古木の桜も

ひょろりとした桜の木も 切られてしまい

今残っているのは 築山に人知れず咲く 

山桜だけになってしまった