大学時代 女子寮に入ってた
女子寮はXの形をした 3階建ての
建って間もない建物で
ウイングにはそれぞれ10部屋
全体で計110と部屋数も多かった
私の部屋は南ウィング3F 最上階のどんつきで
同じウィングの新入生は7名
向かいには 新入生の部屋が3部屋並び
隣は 一番怖いと言われている 3年生の先輩
そして そのまた向こうに新入生
寮に入ってすぐ
新入生が1Fの歓談室に全員集められた
そこで言い渡された
寮生活のしおりには書いてない 一年生にだけ適用される規則
それは
朝晩の点呼 朝の6時と夜の9時
1年性は1秒でも遅れたら
罰として正座&トイレ掃除
勿論 外泊は厳禁
ええーっ いつの時代ですか? と
全新入生の顔が一気に曇った
(誰も声には出さなかったけど)
その後、新入生同士 こっそり一部屋に集まって
「横暴ーーー、信じられない」
「大学の寮ってこんなに厳しいの?」
「聞いてなかった、知ってたら入らなかったよ」
と
こっそり一部屋に集まって 不満を言い合った
それでも 出るという選択肢はない
なんたって寮費は破格に安いし
建物は新しくって部屋も綺麗
一年乗り越えさえすれば、あとは自由
頑張って乗り越えようね、と
新入生同士で誓い合った
まだ、みんな真面目で純粋だった
1週間ほどたった ある日のこと
朝の点呼に 同じ3Fウイングの北東一番端の部屋の
Nちゃんが出てこない
ノックして、名前を呼んだ
返事がない
まさか中で倒れていたらまずい と
先輩が 住み込みの寮長さんの元に走り
合鍵をもらってきた
ガチャっと開けたその部屋の中に
Nちゃんの姿はなかった
姿どころか、備え付けの家具以外の
Nちゃんが持ち込んだ 私物という私物が消えていた
新入生も先輩も 何も聞いていない
救急車を呼ぼうとスタンバイしていた先輩も
心配で覗き込んでいた新入生も
訳が分からず その場で顔を見合わせた
学生が一人消えました
そこに寮長さんが やってきて
「今 私のとこに電話があったんだけど
Nさん 退寮されました
寮の規則を守る自信がないんですって」
寮長さんは部屋を覗き込み
「あらまあ、すっからかん 綺麗にしてったわねー」
それだけ言うと
オネエらしく 腰を揺らしながら去っていった
その日の夜の9時前
新入生たちは Nちゃんのことを話しながら
点呼のために部屋の前に立って待っていた
Nちゃんの事は 寮内でも噂になっていたけれど
学校も今日は休んだらしく
誰も彼女から直接 話を聞けていなかった
9時になった 点呼の時間
ところが、いつもの
「皆さんこんばんは 点呼を始めてください」という放送が入らない
先輩たちも部屋から出てこない
もちろん、先輩たちは外泊OKだから いなくてもおかしくないが
全員欠席というのは おかしいし
外泊連絡も聞いていない
寮内が急にザワザワし始めた
Nちゃんの事もある
ただ、さすがに先輩の部屋のドアを ドンドンノックする事はできない
5分ほど経った頃 キーンという音がして
寮内に放送が流れた
「新入生の皆さん、
点呼は今朝の回で終了です。
夜の点呼もありません。
明日の朝から、ゆっくり起きても大丈夫
事前に連絡すれば、外泊もOKです
ようこそ ○○寮へ!」
何と
点呼も外泊禁止も新歓ドッキリだった
「なんだー」 新入生全員の力が抜けた
それにしても可哀想なのはNちゃん
早まっちゃったね
全くもって罪作りな 新歓ドッキリだったのでした
(ドッキリ成功というより、
ドッキリさせすぎて失敗しちゃったお話……です)