JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

上手くないのに 待ち遠しかった発表会

 

私が子供の頃は 同級生の女の子のほとんどが 

ピアノ教室に通っていて

私も、父の知り合いの ドイツ帰りの先生の教室に通うことになった

 

先生は 背中に棒でも入っているのではないかというほど姿勢が良く 

髪を高く盛り上げてアップにした 

クラシックな雰囲気の 女性で

イメージで言うと

伝統と格式を重んじるイギリス上流階級マダム

 

教え方は厳し目で

歯に絹着せぬところは さすがドイツ仕込み

 

せっかく通わせてもらっておいて 申し訳ないのだが

私に音楽的才能は 自慢じゃないが 

これっぽっちもなくて 

先生も教えるのに骨折りだったと思う

 

先生に

「Juniperちゃんは本当に算数が得意なの?

算数のできる子はピアノも上手なのに どうしてかしら」 と

真顔で悩まれてしまうレベル

 

音楽の神様は 私のところを素通りしちゃったみたい

(高校に入って 数学も苦手になり 先生の言葉が正しいことが証明された)

 

上達しないから 練習もつまらないという悪循環

教室に行く前に 近くの本屋に寄って

そこで直前まで時間を過ごし

いつも慌てて走って 先生のお宅の呼び鈴を押す

 

それにね 言い訳していいですか

手が小さいんです 私

これまで 私よりも小さい人に会った事がないくらい 小さい

だから、親指から小指でオクターブ

頑張って「レ」がせいぜい

 

だから、中学二年の時 学校から帰宅した途端

母から

「もうすぐ受験だから ピアノにはもう通わなくていい」と

勝手に宣言された時も

私にまず聞いてからにしてよ! とは思ったが

全く上達しないのに だらだらと続けるのは辛かったし 

レッスンの時間を もっと他のことに使いたかった

母のやり方は強引だったが 止めて正解だったと思う

 

そのくらいピアノが苦手な私だったけれど

ピアノ教室に行くのが待ち遠しくなる日が

一日だけあった

 

先生の教室では年に一回 発表会がある

ホールを借りるような大掛かりなものではなく

先生のご自宅に集まって開く ピアノ発表会

 

ドイツ帰りの先生のご自宅は

ヨーロッパから運んできた

アンティーク調の家具に 

ドレープのたっぷりとしたビロード地のカーテン

大きなタッセル 大理石の彫像と

ドーム型の時計 ビスクドールなどなど

女の子がイメージする 

西洋のお屋敷そのものだった

 

ピアノ発表会当日は

それら素敵な調度の置かれた部屋に

おめかしをした生徒たちが集まって

先生や生徒の演奏を聞きながら 

紅茶をいただき

先生お手製の ケーキやクッキーやサンドイッチをつまむ

そして演奏の後は

みんなでゲームをして遊ぶ

 

私のイメージする外国がそこにあった

 

レッスンをやめてからも 

先生とは 折に触れてお会いした

 

その度に 遅々として進まなかったレッスンのことではなく

夢のように楽しかった ピアノ発表会のことを思い出し

 

思わず笑顔に そして

ちょびっとだけ しんみりとしてしまうのである