JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

ドイツには「お静かにタイム」がございます

ドイツ人は耳と目と鼻がいい と聞いたことがある

なぜ? と聞いたら

ワイルドだから(野生に近いから?) とその人は言っていたが

 

確かに、ドイツ人には五感の鋭い人が多い

 

だからかどうかは知らないけれど

ドイツには、静かにする時間(ruhezeit)がある

 

時間帯は法律で決められていて

平日&土曜日は 

13時〜15時(州によって違う) と 夜8時〜翌日7時まで

日曜日は終日

 

この時間帯は 大きな音厳禁で

工事も中断するし

カーペットをバシバシ叩いてもいけない

掃除機だってかけられないし

洗濯機もダメ

音楽を大音量で流してダンスなんてもってのほか

 

警察に通報されちゃいます

 

日曜日は安息日だからわかるけど

お昼2時間はなんで? と聞いたところ

高齢の方々のお昼寝時間をじゃましないように との答え

本当なんだかどうなんだか

けれど、静かにお昼寝を満喫できるのは いいこと

 

これらの静けさタイムについては 渡欧の前に聞いていたし

特に問題なく 品行方正に過ごしていた私たち

 

ドイツに住み始めて3年ほどした頃に

住んでいたアパートの部屋を

大家さんが売りに出すことになり

 

郊外の一戸建てに引っ越した

その家には3m程の 常緑樹の生垣に囲まれた庭がある

そして庭は全面が芝生

芝は放っておくと どんどん伸びて モッサモサになってしまう

日本の芝と違って あちらの芝は雑草並みに強い

 

伸びるのが早いから 夏の間は2週間に1回くらいの頻度で

もしくは毎週

刈らなくてはならない

 

「芝刈りは僕がやる」と夫が名乗り出てくれたが

仕事があるから 週末しかできない

そして日曜日は音を出してはならない日

芝を刈ることができるのは土曜日に限られる

 

ドイツに暮らし始めた当初

日曜日に開けているお店は 皆無

(日曜日は安息日なのでね)

買い物は土曜日にまとめてすることが多かった

(だんだんドイツも変わって 

後半は日曜日に開ける店も多くなってきたけど)

 

そして そう 本当にうっかり

それは起こった

 

夏の日で 芝は元気よく 言うなれば旺盛に伸びていた

隣の大家さんの庭は 

美しく綺麗にすっきり刈られている

それに比べて我が家の庭は…

大家さんが顔をしかめる様子が目に浮かぶ

 

今を逃したら 来週まで待たなくてはならない

(それか、やけに重いドイツ仕様の芝刈り機を使って 私が刈るか……それは嫌だ)

 

夫は私のブータレ声と大家さんの呆れ顔とを

思い浮かべたに違いない

「さっさと やっちゃおう」 と

芝刈りを出してきて

ぐおーんとスイッチを入れた

 

その途端

 

向かいのアパート3階の部屋の窓から

おじさんが

間髪入れず 頭を突き出し 

 

「ノーーーーーーウ」 

両手を振り回しながら 叫び始めた

 

ナイン(Nein)ではなく ノー(No)と言ったのは

私たちがドイツ語を理解しないと思ったからに違いない

 

おじさんのあまりの剣幕に 夫は 

これ以上ないほどのスピードで

芝刈り機を倉庫にしまった

 

ふと気づいてみれば

今日は日曜日である

絶対に絶対に 芝を刈ってはいけない日であった

 

そして翌日、ポストを開けると

「日曜日に芝刈りはダメ」と書かれた紙が入っていた

 

といって、おじさんは意地悪をしているわけではなく

「まだよく知らないんだよね、ここではこれを守ってね」くらいのものだと思う

警察に通報されるよりよっぽどいい

 

さっぱり はっきり 後腐れがないのが

ドイツ人の良いところ(腐れる人もいるのかもしれないけど)

そのおじさんには その後もいろいろとお世話になった

 

しかし何しろ あの時の

瞬発力と 剣幕にはインパクトがあった

おかげでそれ以降 

一度として「うっかり芝刈り」を再発させたことはない

 

ドイツ人の五感の鋭さを 

この目で実際に見る機会を与えてくれた

ただ一回の 日曜芝刈りだった