JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

前歯のリーチ ー馬に噛まれた話ー

 

馬の歯って、なかなか大きいです

馬の種類にもよるのかもしれないけれど 大人になると長さ7cmくらい

で、ちょっと前方に突き出ています

似顔絵の明石家さんまさん みたいな

 

そして、案外数があるんですよ

奥の方までずらずらーっと生えているので

 

牡と牝とで本数が違って 

牡には人間で言う犬歯なのかしら

牝よりも2本多く生えているそうです

数えたことないですけど

 

ただ、馬の口はよく触ります

ハミを噛ませなくてはならないので

 

ハミというのは

ハイブランドのバッグなどに

チャームや金具として ちょこっとついていたりする

コミュニケーションをとるために 

馬の口に入れる金具のこと

口には入れていますが、

馬はハミを歯で噛んでいるわけではありません

馬の前歯(切歯)と奥歯(臼歯)の間に

何も生えていない歯茎だけの箇所(歯槽間縁)があり

そこに すぽっとはめるようになっています

 

ちなみに、ハミを噛ませるときは

馬の頭を下から抱え

もう一方の手でハミを馬の口に当て、

(嫌がるときは例の空間に指をぐいっと入れて)

くいくいっとすると

金具(ハミ)を馬が歯槽間縁に送ってくれます

 

この空間がなかったら ハミをかけられません

歯槽間縁さまさまです

 

この空間、鹿にも牛にもあるようなので

彼らにもハミをかけようと思えば かけられるってことになるのかな

 

ハミ=繊細な指示を伝えるためのコミュニケーションツール

 

なので

歯槽間縁さえあれば

もののけ姫ハリーポッターの世界のように

野生の動物の背に乗って

自由自在に駆け回るのも可能???

 

あ、オオカミに歯槽間縁はないので

常人がハミを使って オオカミに乗るのは無理ですね

 

神話の世界みたいに 心が通じ合っていれば

ハミなんてなくとも わかり合えるのかもしれません

 

 

 

さて

 

ドイツでは(日本でもあるのかも)馬を丸ごと一頭

自分の馬として借り受けることのできるシステムがあるのですが

(馬を一頭借りる=乗るだけでなく、世話をして、食費などの経費をお支払い)

 

そのとき私が借りていたのが

 

芦毛(注1)のアラブ馬(注2)

 

名前はトレド

(登録名は長いのがあるのですけど、呼ぶときはこちら)

繁殖の可能性を考えて 去勢されておりません

 

体高低目の馬で

身長157cmの私の体格に合っていた

だから 借りて乗ってみない? と声がかかったんだろうな

 

オーナー(コーチでもあります)は 私よりも背が低かったのですが

ドイツ人には背の高い人が多いのです

 

 

 

その日私は

トレドの馬房の掃除をしていました

馬房の中に 彼と二人きり

 

シチュエーション的には

下僕(お掃除する私)がお仕事している部屋に

主人(アラブの王子)がいる でしょうか

 

糞をとって 汚れた藁を出して 新しい藁を入れて 

彼が寝やすいように 藁をふっかふかにする

そんな日頃のお世話をしていた時

 

 

かわいくってキュートな牝馬

馬場に行くため 乗り手に引かれて

私たちの馬房の前を通りました

(下を向いている私は それが牝馬だということに気づいていません)

 

途端 

ご主人様 もとい

高貴なるアラブ スタリオン の本能が燃えたぎり

彼の目はらんらん 

 

その目が示すもの それは

 

牝馬だ!

 

その視線(それとも におい)を感じた牝馬は動揺

手綱を引いて歩いている乗り手を

置いていきかねない勢いで 外へとぱっぱか逃げ出した

 

「ちょっと そいつ=アラブをどうにかして!」

とは 乗り手さんの叫び声

どうにかするも何も、女好きは檻の中

追いかけて行きたくとも 手立てなし

 

 

それでもなんでも

彼女を追いかけたくて仕方のない 彼

 

だというのに

馬房の戸は閉められて

アプローチの手段は途絶え

その上

彼女との間には

 

邪魔する奴(それは私)がいる

 

こう言う時 節操なしで 

血気盛んな牡馬のやること

 

こいつめ じゃまだー っとばかり

私の背中を ガブリ

 

急な襲撃に

私も驚愕

 

「何すんのよ!」と 思わず彼の顔に肘鉄を喰らわせ

馬房から一目散に退避

 

家に戻って合わせ鏡で見てみると

肩甲骨の間に

 

くっきりと馬の歯形

 

Tシャツ一枚だった ということもあるでしょうけど

肩甲骨の間ですよ

出っぱっているわけではありません

どちらかといったら凹んでます

 

 

どれだけ前歯出てるんだ

 

 

それ以来 恋の季節

彼の馬房の中を掃除する際は

 

「女子 近寄るべからず!」

 

以前よりも 倍々増し増しで 

強力に 頻繁に

アナウンスするようにいたしました

 

もともと彼はアプローチが強すぎて

女の子という女の子(のオーナー)から避けられてたんですよね

 

実は、彼の女好きエピソードはこれに止まらないのですが

今回はまずこのへんで

 

 

あ、恋の季節はこんな感じですが

日頃はとってもジェントルマンでハンサムなのですよ

彼の名誉のために、念の為

 

 

 

(注1)芦毛

歳をとるとともに白さが増す馬の毛色の名前 

子供の頃は栗毛や青毛(黒い馬)にちらほらと白い毛が混じっている程度

白馬と違って皮膚は肌色ではない

 

(注2)アラブ(純血アラブ)

アラビア半島起源と言われる

一番初めに確立された馬種で特徴的なシルエットを持ち、馬術競技に優れる

体高は低め(150cm程度)が多く、小柄 

日本でいうアングロアラブとは別種

アングロアラブサラブレッドの内、アラブの血量が25パーセント以上の馬のことをさす