JuniperBerry’s diary

日々感じたことや ふと思い出した事を 書いてます

吹雪の話

実家のことを先日ちろっと書いた(防寒の話)時

叔母の話を思い出しました。

 

私の実家はすごく田舎にあって、

私が子供の頃も今も変わりなく、

やっぱり田舎なのですが、

叔母が若かった頃は、もっともっと田舎だったのだと思います。

 

叔母がまだとっても若い頃、

冬の最中、街中に用事で出かけたそう

出かけた時分はすっきり晴れていたそうです。

 

ところが、さて歩いているうちに、

雪がちらちら降り始め

その降りもどんどんと強くなってきていました。

 

雪国では、さっきまで青空が見えていたと思ったら

吹雪って事があります。

 

私の祖父は、実家を継いだものの、

仕事柄、全国各地を動いていて

家の管理は番頭さんにまかせていました。

 

この時、叔母はお正月を過ごすために来ただけ。

 

だから、雪国の天候がどんなものなのか

よく知らなかったのだと思います。

 

 

今は、最寄りのバス停になっている場所に、

その頃には茶屋がありました(今はコンビニになっています)。

そこが家に続く道を曲がる目印で、

茶屋から私の実家まで、普通に歩いて徒歩30分ほど。

 

叔母は町中から茶屋にたどり着くまでで、

雪道を既に2時間近く歩いてきていたはずです。

 

茶屋から途中までは道沿いに民家があるけど、

半分くらい行ったところから、田んぼの中の一本道になる。

その一本道の突き当たりが我が家。

 

歩いているうちに雪の勢いはどんどんと強くなり、

一本道に差し掛かった頃には、

猛吹雪であたりは上も下も右も左も前も後ろも真っ白。

 

通常なら家の目印になるこんもりとした木々も

まったく見えない雪世界

 

もちろん、その頃は電信柱さえ立っておらず

目印になるものは一つとしてありません。

(今はさすがに電信柱が立っていますが、間隔が広すぎて、

夜中に歩いて通るのは真っ暗で怖いです)

 

雪が降れば、道と田んぼの境もわからなくなり

途中の深い用水路もぱっと見にはわからなくなる。

 

もう、この雪の中で死ぬかもしれないと

叔母は思ったのだそう。

 

ちなみに、

叔母はすごく勝ち気で負けん気が強い。

9人いる父の兄弟姉妹の中でダントツで、

その気の強さは私も確認済み。

 

だからこの時も、

私は一人で大丈夫と、

誰も連れずに町に出かけた。

 

学年一の秀才と呼ばれていながら、

祖父から

「お前みたいに気の強いのを大学に行かせたら、

嫁の貰い手がなくなる」と

兄弟姉妹の中で、唯一大学に行かせてもらえなかったのだと

父が言っていました。

 

今の時代だったら、大活躍できたかもしれません。

ただただ、産まれた時代が悪かった。

 

 

そう、そして雪嵐。

 

ここで選択肢は3つあります。

1、この場から動かず雪嵐が収まるのを待つ

2、後戻りして民家に助けを求める

3、どうにか家まで歩いてたどりつく

 

それぞれ選択してうまく行かなかった場合

1、雪嵐が夜になってもおさまらなかったら死にます

2、負けん気の半端ない叔母のプライドが傷つきます 

3、用水路にハマったら死にます

 

いくら勝ち気なおばでも、2番を選ぶのが最善の策ということはわかっていたはず。

頭いいんだし。

 

ところが、その時には

後戻りしようにも、もう戻る道さえ見えなくなくなっていた。

そして残されたのは、前進、もしくは停止のみ。

 

真っ白の中に一人佇んで考えていた叔母は

えいやっと一歩踏み出した。

 

風の向きを感じながら

足の下を探りながら、

いっぽいっぽ着実に、でも、できるだけ早く

 

実家のそばには大きな川が流れています。

叔母は風は川の方から吹いてくるはず、そうにらんで、

そのことに、かけたそうです。

 

左側から直角に風が当たるように

まっすぐに進む。

そうすれば、道を大きくはずれることはないに違いない。

 

 

晴天なら15分の道のりを

どれだけかけて歩いたのか。

 

 

歩いているうちに、雪の大きな壁に突き当たり、

その向こうに、ぼんやりとした光を感じた。

 

「ああ、死なずに済んだ」そう思ったそうです。

 

雪の壁は、道からよけた雪を積み上げたもので、

すぐそばに人家がある証拠。

 

家に着いてみれば、

人々が、戻ってこない叔母を探しに出ようと、

提灯を用意しているところだったそうです。

 

 

そして、叔母の無鉄砲さと負けず嫌いと機転のエピソードは

その後、何回にも渡り、語られることになりました。

 

 

 

その後のお話

 

叔父が早くに亡くなり、叔母は東京の自宅に一人暮らしになりました。

 

ある日、叔母は家で不調を感じ、

ここにいたままでは誰にも気づいてもらえないと

とっさに家の前の道路に出てから倒れたそうです。

 

住宅地なので、人が気づいてくれてすぐに病院に運ばれ、

命をとりとめた、ということがありました。

 

咄嗟の判断のできる賢い叔母でしたが、

あの時代、賢いがゆえに、葛藤の多い人生だったのかもしれないなあ、とも思います。